June 24, 2007

PLUTO(5)

鼻炎になってから10日になるがいまだに嗅覚が戻らない。匂いがしないと何を食べても味がしない。食べ物の味というのはほとんど嗅覚で感じているのだということがよくわかる体験だった。食の味わいが減るのだから嗅覚の無い人生とはなんと味気ないものか。

犬の嗅覚は人間の1億倍なのだという。人の目が認識できる色の数は数千万色。犬の嗅覚が感じる世界というのは人間の視覚で見ている世界の数10倍豊かだと試しに考えてみてもちょっと想像できない。基準もあやふやなので何倍かにほとんど意味はない。いずれにしても私たち生き物が取り巻く世界のリアリティというものは感覚が感じられる範囲内でのリアリティなのだ。

もし感覚を増幅する機械があればどうだろうか。
視覚と聴覚が1000倍になりました。より正確に世界を捉えることができるようになるのだろう。生きることがもっと豊かに感じられることだろう。人の表情の微妙な筋肉の動きを読み取れるようになるかもしれない。3km先の動物の脅えを察知できるかも。だとすれば、心の動きも変わっていくのだろうか?

科学の進歩で遠くで起きている出来事を「見て」予測できるようになってきた。20km先の雨雲を携帯電話を使って見ることができ数時間後には雨が降るだろうと予測し今の行動に影響を与える。計測データの積み重ねから100年後の気温の変化を予測して何が起こるのかをおおよそ見当をつけ、今なにをすべきか考える。地球の裏側でなにが起きてるかテレビを通して知り、悲劇ならそうならないにはどうすべきなのだろうと議論する。

進歩は進化ではないと誰かが言った。では進化とは何を指すのだろう。

投稿者 kensuke : 08:35 AM | コメント (0)

February 14, 2007

PLUTO(4)

◇この漫画には個性的なロボットが登場していてそれがおもしろさの要素になっている。
今回は「運」を味方につけるトルコの最強格闘ロボットについて書いてみたい。
未来のロボット格闘技では同じ規格のマシン同士の対決となっている。普段の社会的な生活のときは人間に似たボディスーツを使用し、格闘技のときにはパワースーツに人工知能の部分をボディスーツから取り外し組み込む。格闘技は同じ規格のボディスーツで行われるのだから、つまりプレイヤーで差が出るのは人工知能の差である。
この最強格闘ロボットは勝負は「運」だと言い放つ。格闘技で得た賞金を子供ロボットを「育てる」のに使う選択をしたことで「運」を掴んだのだという。
これは一体どういうことだろう。「育てる」という経験を通して得る何かが格闘技で最強のロボットに「育てる」ということなのか?

◇ところでこういった勝負というのは現代でも見られる。F1レースなどまさにマシンとドライバー両方が勝負に関係している。競馬の馬と騎手の関係も似ている。
マシンはどのチームも金と時間をかけて念入りに徹底的に調整されてくる。それでも優勝するのはいつものドライバー、シューマッハであったり武豊だ。これはどういうことか。
つまり人間をマシンに喩えるならこういうことだ。あいつと俺、同じ人間なのにいったいなんでこうも違うのだろう?
おそらくはほんのちょっとした違いなのかもしれない。人間が物質であると割り切れない理由がここにありそうだ。

October 20, 2006

PLUTO(3)

PLUTO (2) ビッグコミックス
PLUTO (2) ビッグコミックス浦沢 直樹

おすすめ平均
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『PLUTO(1)』 『PLUTO(2)』の続き。

◇二巻目でようやく日本の少年型ロボットが出てくる。
この少年型ロボットはどのロボットよりも高性能であるにもかかわらず、戦争時には日本から出ることが許されていないため戦闘に参加していない。戦後復興に送りこまれるため戦争終結のシンボル、平和の使者として市民に歓迎されている。
だけどこの少年型ロボットはそのような状況に不満そうである。
高性能ロボットが戦争に参加することが当然の時代、日本の科学省はそれを認めていないのだ。
未来の日本においてもし10万馬力のロボットが出来たとき、ロボット自らがこの問題に悩むような状況であってほしい。高性能がゆえに、答えは簡単には出せないだろうけど。

◇コミックの読者はゴーマンな正しさを求めているわけでもなければ、がむしゃらに好みばかりを追いかけてるわけでもないのではなかろうか。嗜好や正誤で判断できない現実があることを読者に突きつけることにこのコミックの批評性を感じる。

◇私としては日本が復興のシンボルになることは世界から見た日本の存在価値や独特さ、ユニークさになるであろうと考える。
1900年代の戦争であそこまで破壊されてここまで復興してきた国なんてそうそうはない。いろいろ問題はあってもここは小さく誇ってもいいんじゃないかと思う。
ハリケーンで破壊されたアメリカのとある街は未だに放置されて廃墟のままだ。この違いは日本の生活者の思想が関係しているようにも思う。
かたちあるものは壊れる。が、壊れるものに手を入れて治すこともできる。破壊することより難しいだろうけど価値はある。かたちを作ったものの心を辿ることができる。


<続く>

September 29, 2006

PLUTO(2)

PLUTO第一巻の続き。

◇この時代のロボットの記憶システムは削除したりメモリーチップで交換することができるが、人間のように記憶が曖昧で昔のことを忘れたりということがない。ロボットと人間の違いは明確だ。

◇ところでこのようなロボットの記憶システムで不思議に思うのは、「今」が過去の記憶ではなくて、まさに「今」であること、自分の記憶がほかのロボットの記憶ではないことをどうやって見分けるのか、ということだろうか。
記憶チップを交換したら、他のロボットが経験して覚えてきたことを、さも自分が経験してきたことのようになりはしないのだろうか。「私」を構成している記憶が消滅しはしないか。
おそらく個体識別子と時間を同時に記録しトレースできるようにすることで、ロボット独特のボディイメージを持たせることが必要なのだ。
或いはそんな高性能な機能のついてないロボットも存在するかもしれない。つまり、自他を分けることのないロボットである。下手をすればジャイアニズムであろうし、巧くいけば鳥や森の木々にすら自分自身の記憶を観てしまうかもしれない。
また、忘れることの無い記憶というのは目の前で見ている現実とほとんど変わらないであろうからいつまでも過去の記憶を思い出してはリピートし、まさに「今」の出来事に対応できなくなるかもしれない。
そういった事態から抜け出すには「ピアノを弾けるようになりたい」というような「願望」や志向性を持たせ、刻々と過ぎて記録される「今」から逃避できるような「ちょっと未来予測システム」にすることだろうと思う。(どうやって?)「願望」と「今」のあいだに葛藤が生まれることにはなるだろうが。
ロボットに音楽はわからない。しかし、ピアノを弾くということがロボットにとって生き残るための手段であり、そのような論理構造を持つことが戦場で自分の身を守り生き残るための重要な機能ではないかと思う。

◇というようなことを自分なりに勝手に解釈したうえで、このコミックの作者は更にノイズを入れてくる。であるなら何故ロボットは戦うのか、と…

<続く>

September 17, 2006

PLUTO第一巻

PLUTO (1)
PLUTO (1)浦沢 直樹 手塚 治虫 手塚 真

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stars浦沢直樹の挑戦
starsモンブランとノース2号が憐れ
stars実はテーマは近い
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◇『PLUTO』は人間とロボットの境が限りなく近づいた未来を描いた漫画である。
この時代のロボットは人間に近い感覚をアップグレードするために、人間と同じ生活を営み、ロボット同士で結婚もすれば、「子供」を購入し「育てる」こともできる。人間が起こした国家間の戦争は、ロボット同士の代理戦争となっている。
そんな世界におけるロボットの「ココロ」を繊細に描いたのがこの作品。日本のコミックが文化的にみても凄い水準にきていることを実感させてくれる作品である。

◇まだ連載は続いているのではっきりしないけどいままで読んだ限り、ロボットに搭載されている人工知能は、ある状況におかれた人間の反応を学び、似たような状況におかれたら真似するというタイプのようだ。だれかがあくびを気持ち良さそうにしているのを見てついつい自分もやってしまうというあれだ。
多くの場合人間の感情とは、予想もしない事態に直面したときに起きる脳内エラーが涙腺や顔の筋肉や心拍に伝わり動作となって現れるものだから、このタイプのロボットが人間のような感情があるように見えて必ずしもあるとは言えない。予めインプットされていた事態に予定調和的に反応したに過ぎない。
それでもドキッとさせられてしまうのは、描く表現の巧さであり映画やアニメ、文章と違った漫画ならではの表現にあるのだと思う。

◇私が予想するに、人間の生活に入り込む自律型ロボットの「人工知能」はどうもこのタイプの可能性が高いような気がしている。人間のように予想もしない行動に出たら危険だし、エラーごとにいちいち停止しても使い物にならない。
そして、一台一台にデータが積み込まれたものではなくて、ロボットは出入力専門の子機として使われ、無線で巨大な人工知能と命令をやりとりするようになるのではないか。ロボットの入力機能からの情報を受け取った「人工知能」はシチュエーションを分析し、似た状況下での人間の反応をインターネットで検索し、最適と思われる反応をロボットに返す…。
そんな妄想をかきたてられる。
<続く>
追記:人間の感情もまた長い歴史の中で刻み込まれてきたコードを読み込んで反応しているだけに過ぎないのかもしれないが。

◇参考にした本
脳と創造性 「この私」というクオリアへ
茂木 健一郎
4569633536

おとぎの国の科学
瀬名 秀明
4794966997

鉄腕アトム55の謎
布施 英利
4140880619